6月のフラワーエッセンスの花 近縁種の開花情報 その8

《スイートチェスナット》

ブナ科クリ属

〈和名〉西洋栗・ヨーロッパ栗

 

ヨーロッパ南東部・バルカン半島あたりが原産で、耐寒性があり、長寿です。

食用として古代ローマ時代から広まり、日本では縄文時代から食べられてきました。

 

2年前に植樹された若い木は花の観察が近くでできました。

5月末のフワフワの雄花穂です。たくさんの小さな花が集まっています。

 

栗の花は単性花で、雄しべ、雌しべが別れます。

単花被花で、花弁に似た萼としべの花です。

 

この時、雌花はまだ目立たない状態で、見逃していました。

 

12日後の雌花の姿です。

雌花の真ん中に雌しべが見えます。周りの緑のトゲトゲがイガになる部分です。

 

受粉は虫によります。

雄花穂にはたくさんの蟻や、蜂も来ました。

 

近くに栗の木はなかったのですが(自家不結実性)、18日後には小さなイガが2つ育っていました。

"ぽろたん"という渋皮までポロリと剥ける栗の木。

 

イガに変化した雌花。

 

葉は表は艶があり、裏はざらっとして白っぽいです。

 

風にゆらぐやさしい雰囲気の雄花穂と、トゲの鎧をまとった雌花がペアのスイートチェスナットでした。


植物観察担当 佐々木

 

《追記》

*栗の雄花は前年の夏に、雌花は今年の春にできはじめます。

 雌花はすべての雄花穂の基部にできるわけではありません。

 今年新しくできた枝に、1〜4個づつ着生しますが、栄養が十分で、剪定が適切などの条件が揃う必要があります。

 (雌花がついた雄花穂を"帯雌花穂"とい呼びます。)

 

*自家不結実性は、結実するには別の品種の花粉が必要です。

 

*ヨーロッパやアメリカの栗は日本の風土では、病気や害虫に対抗できず育たないようです。

 中国の栗も受粉や害虫の問題があるようですが、近年では品種改良された中国栗が育っているようです。

 

*樹齢100年の栗の木がイギリスや中央、南ヨーロッパでは見られるようです。

 

*栗はタンニンが多く、葉やイガなどが民間療法に用いられます。

 

*硬い材質です。

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コメント: 1
  • #1

    若狹 昇 (日曜日, 29 7月 2018 21:11)

    よく観察されて、写真もわかりやすいので理解しやすいです。勉強になりました。
    ありがとうございます。